史上最大級の「爪」を持つ恐竜って、どんな姿を想像しますか?
鋭い爪で敵を引き裂く、恐ろしい肉食恐竜でしょうか?実は、その爪を持つ恐竜 テリジノサウルス は、獣脚類(ティラノサウルスなどの仲間)でありながら、植物を食べていた可能性が高いと考えられています。
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なんと、映画「ジュラシック・ワールド」にも、テリジノサウルスが出演しているんですよ!
【ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 | テリジノサウルスとの遭遇】
テリジノサウルスは 白亜紀後期(約7,000万年前) に生息していた恐竜で、長い首と大きな体、そして 90センチメートルを超える巨大な爪 を持っていました。
しかし、その爪は何のために使われたのでしょうか?そして、本当に植物だけを食べていたのでしょうか?
この記事では、謎に包まれた テリジノサウルスの正体 に迫ります。彼らはどんな恐竜だったのか、一緒に探っていきましょう!
テリジノサウルスとは?
テリジノサウルス(Therizinosaurus)は、約7,000万年前の白亜紀後期に生息していた恐竜です。
生息地は現在のモンゴルやカザフスタン周辺とされています。この恐竜の名前は「刈り取りをするトカゲ」という意味で、特に前足の大きな爪が特徴的です。
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テリジノサウルスの名前の由来は、「刈り取りをするトカゲ」です。これは巨大な爪が鎌に似ていることに由来します。
最初の化石は1948年にモンゴルのゴビ砂漠で発見されました。
当時は、その長い爪から「巨大なカメの一種ではないか」と考えられていました。しかし、その後の研究で、実は恐竜の仲間であることが判明しました。
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テリジノサウルス類の化石は、アジアだけでなく、北米などでも発見されています。
テリジノサウルスは、全長が8~11メートル、体重は約5トンと推定されています。
長い首と大きな胴体を持ち、特に前足には90センチメートル以上もある巨大な爪がついています。この爪は、陸上動物の中で最も長いものの一つです。
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初めのころは、テリジノサウルスは肉食恐竜だと考えられていました。
しかし、研究が進むにつれて、植物を食べていた可能性が高いことが分かりました。頭は小さく、葉っぱを食べるのに適した形の歯を持っていました。
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テリジノサウルスは、テリジノサウルス類に属する恐竜で、この類には植物を食べるのに適応した珍しい恐竜が多く含まれます。
実は、日本でも北海道で「パラリテリジノサウルス・ジャポニクス」というテリジノサウルスの仲間が見つかっており、このグループの種類がとても多かったことが分かっています。
テリジノサウルスは、その長い爪や独特な体のつくりから、恐竜の進化や生活を知るうえで、とても興味深い存在です。今後の研究で、さらに詳しいことが分かるかもしれません。
テリジノサウルスの体の特徴
画像:PR TIMES
テリジノサウルスは、特徴的な体のつくりを持つ恐竜です。体の大きさは 全長8~11メートル、体重は約5トン ほどと考えられています。
首が長く、胴体はずんぐりと丸みを帯びた形をしています。
以前は、ペンギンのように少し立ち上がるような姿勢で歩いていたと考えられていましたが、最新の研究では 他の獣脚類と同じように体を水平に保ち、尾でバランスを取りながら二足歩行していた 可能性が高いとされています。
特に目立つのは 前足にある巨大な爪 です。
画像:PR TIMES
化石の状態でも 約70センチメートル あり、生きていた時には皮膚や角質がついて 90センチメートル以上 になっていたと考えられています。この爪は 陸上動物の中で最も長い ものの一つです。
この爪の使い道については、まだはっきりとは分かっていませんが、以下のような説があります。
- 捕食者から身を守るため(武器として使った)
- 木の葉を引き寄せるため(高いところの植物を食べるため)
- 昆虫の巣を壊して食べるため(アリやシロアリなどを食べた可能性)
また、テリジノサウルスの 歯の形状や顎のつくり は植物を食べるのに適しています。
しかし、完全に植物食であったかどうかは確定していません。最近の研究では、植物を主に食べながら、小さな動物や昆虫を補助的に食べる「雑食」だった可能性 も指摘されています。
さらに、骨盤の形 も珍しく、鳥盤目の恐竜のように後ろ向きの恥骨 を持ちながらも、全体のつくりは竜盤目の恐竜に似ています。
このような特徴は、恐竜の進化を考えるうえで、とても重要なポイントです。
鳥盤目(ちょうばんもく)とは?
恐竜の分類の一つで、骨盤の形が鳥の骨盤に似ている恐竜のグループ です。代表的な恐竜には、トリケラトプス や ステゴサウルス などがいます。ただし、現代の鳥は実は鳥盤目ではなく 獣脚類(じゅうきゃくるい) の仲間から進化しました。
ここ何年かで2回テリジノサウルスのフル骨格図を描いたぷすです。よろしくおねがいします(・∀・) pic.twitter.com/ov8af089EU
— らえらぷす@「恐竜のきほん」発売中 (@GET_AWAY_TRIKE) October 10, 2022
テリジノサウルスは、その独特な体のつくりから、恐竜の中でも特に異色の存在といえます。
テリジノサウルスの食性と生態
画像:PR TIMES
テリジノサウルスは、主に 植物を食べていたと考えられています。その理由は、歯の形 が葉を噛み切るのに適していることや、首が長く、高い場所の植物を食べやすい体のつくり をしていたからです。
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しかし、完全に植物だけを食べていたかどうかは分かっていません。
最新の研究では、小動物や昆虫、場合によっては魚を食べていた可能性 も指摘されています。ただ、こうした食べ物を食べた確実な証拠はまだ見つかっていません。
また、テリジノサウルスの 長い爪の使い道 についても、まだはっきりとは分かっていません。
この爪を使って 木の葉を引き寄せたり、敵から身を守ったりしていた 可能性がありますが、具体的な用途は今後の研究で解明されるかもしれません。
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テリジノサウルスの食性や生態には まだ多くの謎が残されています。今後の研究で、新しい発見があることが期待されています。
テリジノサウルスの発見と研究の歴史
テリジノサウルスの最初の化石は、1948年にモンゴルのゴビ砂漠で発見されました。このとき見つかったのは、大きな前足の骨(全長約2メートル) や 幅広い肋骨 など、一部の骨だけでした。
特に前足には 長さ約70センチメートルの大きな爪 があり、皮膚や角質がついていた生前の状態では 90センチメートル以上 に達していたと考えられています。
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最初にこの化石を見た研究者たちは、「これは巨大なカメのような爬虫類の骨かもしれない」と考えていました。しかし、その後の研究によって、テリジノサウルスという恐竜の仲間のものである ことが判明しました。
その後、1988年にアラシャサウルス(テリジノサウルスの近い仲間) のほぼ完全な骨格が見つかり、テリジノサウルスの全体像が少しずつ明らかになりました。
この発見により、テリジノサウルスは 肉食恐竜の仲間でありながら、動きが遅く、植物を食べていた可能性が高い ことがわかってきました。
さらに、2022年には北海道中川町で新しいテリジノサウルス科の恐竜の化石 が発見されました。この新種は 「パラリテリジノサウルス・ジャポニクス」 と名付けられ、日本にもテリジノサウルスの仲間が生息していたことが明らかになりました。
この発見は、日本における恐竜の歴史を知るうえでも重要なものです。
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このように、テリジノサウルスの研究は、新しい化石の発見や技術の進歩によって進んでいます。しかし、まだ分かっていないことも多く、今後の研究でさらに詳しい情報が明らかになることが期待されています。
テリジノサウルスの分類と進化
画像:PR TIMES
テリジノサウルスは、恐竜の中でも特に変わった特徴を持つグループに属しています。
もともと肉食恐竜の仲間である獣脚類(じゅうきゃくるい)に分類されますが、進化の過程で植物を主に食べるように適応していったと考えられています。
テリジノサウルスの仲間は、テリジノサウルス科というグループに分類されます。このグループは、マニラプトル類と呼ばれる鳥に近い恐竜の仲間に含まれます。
そのため、テリジノサウルスも鳥に似た特徴をいくつか持っていたと考えられています。
例えば、テリジノサウルスの近縁種であるベイピアオサウルスの化石からは、羽毛の痕跡が見つかっています。これにより、テリジノサウルスも羽毛で覆われていた可能性が高いとされています。
また、テリジノサウルス科の恐竜は、長い首や大きな爪、幅広い胴体など、他の獣脚類とは異なる特徴を持っています。
これらの特徴は、植物を効率よく食べるためや、特定の環境に適応するために進化したと考えられています。
さらに、テリジノサウルス科の中でも、爪の形状や使い方が進化の過程で変化してきたことが研究からわかっています。
初期のテリジノサウルス科の恐竜は、爪を主に防御や採食に使っていたと考えられますが、後期の種では、枝を引き寄せて葉を食べるなど、より特化した使い方をしていた可能性があります。
このように、テリジノサウルスは独自の進化の道をたどり、他の恐竜とは異なる特徴を発達させました。その進化の過程を研究することで、恐竜の多様性や適応の仕組みについて、より深く理解することができます。
まとめ
画像:PR TIMES
テリジノサウルスは、白亜紀後期に生息していたとてもユニークな恐竜です。
特に 長い爪 や 大きな体 が特徴的で、最初に化石が発見されたときには、どんな生き物なのか分からず、研究者たちを悩ませました。
しかし、その後の研究によって 獣脚類(ティラノサウルスなどの仲間)に分類され、植物を主に食べていた可能性が高い ことが分かってきました。
また、最近の研究では、テリジノサウルスには羽毛が生えていた可能性がある ことや、独自の進化の道をたどっていたことも明らかになってきました。
こうした発見は、恐竜の進化のしくみや、さまざまな生き方があったことを知るうえでとても大切です。
しかし、テリジノサウルスの生態にはまだ分かっていないことがたくさんあります。
たとえば、「どんな環境で暮らしていたのか」「爪は何のために使われたのか」などは、今後の研究でさらに解明されるかもしれません。
テリジノサウルスは、ほかの恐竜とはまったく違った進化をした生き物です。
その特別な姿や暮らしについて学ぶことで、恐竜の世界がどれほど多様でおもしろいものだったのかを知ることができます。
今後の研究で、新しい発見があることが期待されますね。
最後にちょっと詳しい恐竜の分類図を掲載します。
恐竜 | ||||||
├── オルニスキリア(鳥盤類) | ||||||
│ ├── Thyreophora(装甲恐竜群) | ||||||
│ │ ├── 甲冑恐竜(例:アンキロサウルス) | ||||||
│ │ └── ステゴサウルス類(例:ステゴサウルス) | ||||||
│ ├── Ornithopoda(歩行性草食恐竜群) | ||||||
│ │ └── 例:イグアノドン、ハドロサウルス | ||||||
│ └── Marginocephalia(縁飾頭蓋類) | ||||||
│ ├── Ceratopsia(角竜類) | ||||||
│ │ └── 例:トリケラトプス | ||||||
│ └── Pachycephalosauria(頭頂隆起類) | ||||||
│ └── 例:パキケファロサウルス | ||||||
└── サウリスクリア(竜盤類) | ||||||
├── Sauropodomorpha(竜脚亜目/サウロポダ) | ||||||
│ └── 例:ブラキオサウルス、ディプロドクス | ||||||
└── Theropoda(獣脚類/テラポダ) | ||||||
├── 初期のテラポダ | ||||||
├── Ceratosauria(裂喉竜類/セラトサウルス群) | ||||||
└── Tetanurae(硬竜類) | ||||||
├── Megalosauroidea(メガロサウロイド類) | ||||||
└── Coelurosauria(コエルロサウロイド類) | ||||||
└── Maniraptora(マニラプトラ類) | ||||||
├── Therizinosauria(テリジノサウルス類) | ||||||
│ └── 例:テリジノサウルス | ||||||
├── Dromaeosauridae(ドロマエオサウルス類) | ||||||
│ └── 例:ヴェロキラプトル、デイノニクス | ||||||
└── Avialae(鳥類) | ||||||
└── 現代の鳥類 |
【解説】
- オルニスキリア(鳥盤類)
- Thyreophora:体を覆う装甲や背中に突出した構造を持つ恐竜群です。アンキロサウルス(装甲恐竜)やステゴサウルスが代表例です。
- Ornithopoda:二足歩行あるいは準二足歩行で草食性の恐竜群。イグアノドンやハドロサウルス(「アヒル嘴竜」)などが含まれます。
- Marginocephalia:頭部に装飾的な縁(角や隆起)を持つ恐竜群で、角竜類(トリケラトプスなど)やパキケファロサウルス類が該当します。
- サウリスクリア(竜盤類)
- Sauropodomorpha(サウロポダ):長い首と尾を持ち、大型の草食恐竜。ブラキオサウルスやディプロドクスなどが代表的です。
- Theropoda(テラポダ/獣脚類):主に肉食性で、二足歩行を特徴とする恐竜群です。
- 初期のテラポダやCeratosauria(例:セラトサウルス群)を経て、後に**Tetanurae(硬竜類)**に分岐します。
- Tetanuraeの中では、さらにMegalosauroideaとCoelurosauriaに大別され、Coelurosauria内のManiraptoraから鳥類(Avialae)が進化したと考えられています。
- Maniraptoraには、テラジノサウルス類(植物性または雑食性で独自の進化を遂げたグループ)や、ドロマエオサウルス類(小型で機敏な肉食恐竜群)、そして最終的に現代の鳥類が含まれます。
【注意点】
- この系統図は「分かりやすさ」を重視して簡略化しています。実際の最新研究では、各グループ内でさらに細かい分岐や、学説上の議論が存在します。
- また、近年は「オルニスキリア」と「サウリスクリア」という伝統的枠組みに代わり、恐竜全体を新たな視点(例:オルニソセリダ=Ornithoscelida)で再評価する研究もありますが、ここでは広く採用されている従来の枠組みを用いています。