星がキラキラと輝いて見えるのは、星そのものが明滅(点滅)しているわけではありません。
実は、星がチラチラと明滅しているように見える現象は、地球から星を見るときにだけ起こります。
夜空を見上げるとき、私たちは直接星を見ているのではなく、地球の大気層を通して星を観察しています。
この大気層は地上から数キロメートルの高さにあります。大気は目には透明で安定しているように見えますが、実は波打つガラスのような特性を持っています。
この大気の波動が星の光を揺らがせ、星が点滅しているように見えるのです。
星の光が点滅するこの現象は、主に3つの要因によって起こります。
星の光がチラチラ明滅する原因:その1「空気の流れや気象条件による光の散乱」
いろいろな力が働くことで、空気は常に動いています。
例えば、太陽が地面を温めると、その熱で暖かくなった空気が上に上がり、それと入れ替わるように冷たい空気が下がってきます。
また、空気が山などの障害物にぶつかると、たくさんの小さな渦ができます。
これらの空気の動きを乱気流と言い、これが大気の渦を作り出します。
星の光がこの乱気流の中を通るとき、光はバラバラな方向に散らばされ、その結果、星がチラチラと光って見えるのです。
この現象が星がきらめく主な理由の一つです。
星の光がチラチラ明滅する原因:その2「シンチレーション現象」
大気層は常に揺らいでいるレンズのようなものです。
星からの光が大気を通るときに、大気層のゆらぎが原因で何度も屈折し、星が歪んで見えることがあります。
この現象を「大気シンチレーション」といい、これが星がキラキラと輝いて見える理由の一つです。
大気シンチレーションは、星の光が空気中を通過する際に何度も曲がるために起こります。
シンチレーション現象は、大気が揺れることで空気の屈折率が微細に変動するために起こります。
この変動の原因は多岐にわたりますが、例えば望遠鏡の内部で発生する熱による対流や、観測者の体温の影響、さらには高度なジェット気流までが含まれます。
これらの要因は予測が難しく、そのため地上からの望遠鏡観測の精度には限界があります。
この問題を解決するために補償光学系が開発されました。
この技術は、望遠鏡が大気の揺らぎをリアルタイムで計測し、望遠鏡のミラーを微調整してこれを補正することで、観測精度を向上させます。
すばる望遠鏡などの大型望遠鏡に装備されており、大気の揺らぎによる影響を最小化し、星の観測をより正確に行うために役立てられています。
この進歩により、地上からの観測がこれまで以上に精密で有効なものとなっています。
星の色が変わるシンチレーション効果
星の光が大気の揺れによって歪むことで、星が赤や青の色に輝いて見えることがあります。
大気は常に動いており、その動きによって光の波長が異なる方向に屈折されます。
これにより、見る角度によって星の色が変わって見えるのです。この色の変化は、大気の不安定さによって引き起こされる現象です。
なぜ緑に見える星がないのか?
星が緑色に見えない理由は、星から放出される光の特性と、私たち人間の目の感じ方にあります。
星の表面温度が高くなると、放出される光の波長は短くなり、星は赤から青白い色に変わります。
ただし、温度が緑色の光を強く放出するレベルにあっても、私たちの目はその光を白色として感じるのです。
これは、星の光には多くの色が含まれており、これが混ざり合うことで白色に見えるからです。
さらに、私たちの目の錐体細胞は青、緑、赤の光に反応しますが、普段は緑の光を最も強く感じるわけではありません。
赤と青の光が効果的に混ざり合うことで、緑色の星が目立たなくなるのです。
天文学的な観測で緑色の星が見えると記述されることもありますが、これは通常、特定の観測条件下での錯覚や現象であることが多いです。
星の光がチラチラ明滅する原因:その3「気候の影響」
高湿度の地域で星を見ると、星がチラチラと見えることがあります。
これは、湿度が高いと空気が重くなり、その結果、光が揺らぐからです。
逆に、空気が乾燥して安定している高地では、星や他の宇宙の天体がはっきりと観測できます。
空気が薄いほど、望遠鏡での観察も良くなります。
しかし、湿気の多い密な空気は、星の観察には適していません。
最もクリアな観察は宇宙から直接行われ、そこでは星が地上のようにちらつくことはありません。
星は地平線付近でよりチラチラと見える
大気の密度は場所によって均一ではありません。標高が低くなるほど、大気の密度は高くなります。
この現象は光学的に「大気差」と呼ばれ、星が地平線に近づくほど、その光はより多くの厚い大気層を通過する必要があります。
そのため、地平線近くで星を観測すると、より強くチラチラと見えることがあります。
チラチラと点滅しない星「惑星」の特性について
一般的に、惑星は恒星と違って、安定した明るさで光っています。
これは、惑星が地球に比較的近いためです。
望遠鏡を使って見ると、恒星は小さな光点として見えますが、惑星はもっと広がりのある円盤形に見えます。
太陽からの光を反射しているため、遠くの星からの光よりも大気の影響を受けにくく、その結果、惑星の光はより安定しています。
ただし、地平線の近くで低い位置にある惑星は、光がより多くの大気層を通過するため、時々キラキラと輝くように見えることがあります。
惑星でも明滅して見える場合もある…?
惑星も大気の乱流や観測条件によっては明滅して見えることがあります。
金星が低い位置にある時など、より多くの大気層を通過するため、光が乱反射され明滅して見えることがあります。
望遠鏡の焦点が合っていない場合や光学系に問題がある場合も同様です。
火星、木星、土星など他の明るい惑星でも同じような明滅現象が見られます。
金星、火星、木星、土星などは大きく光が広がりを持つため、大気の影響を受けやすく、特に地平線近くで観察すると明滅して見えることがあります。
太陽は恒星なのに瞬かないのはどうして?
太陽は他の恒星と比べて地球にとても近いため、小さな点ではなく、大きくて明るい円盤として見えます。
そのため、太陽からの光が大気を通過するとき、他の星の光のように屈折されることがほとんどありません。これが、太陽がチラチラと明滅しない理由です。