ファストフード店の看板には赤や黄色が多く、銀行や病院では青や緑がよく使われています。
これは偶然ではなく、色が私たちの気持ちや行動に影響を与えるからなのです。

では、なぜ色を見るだけで気分が変わるのでしょうか?その秘密は「脳の働き」にあります。
色の情報が目を通して脳に届き、感情をコントロールする部分に影響を与えているのです。
この記事では、色がどのように脳に伝わり、気持ちや体に影響を与えるのかを、わかりやすく解説していきます!
1.色はどうやって脳に伝わるのか?

★錐体細胞(すいたいさいぼう)は、眼球の網膜にある視細胞の一種で、色を感知する細胞★桿体細胞(かんたいさいぼう)は、眼球の網膜にある視細胞の一種で、明暗を感知する細胞
色を見たとき、私たちの目の中ではどんなことが起こっているのでしょうか?
まず、色の情報は目の「網膜(もうまく)」で受け取られます。
網膜には「錐体細胞(すいたいさいぼう)」という特殊な細胞があり、これが色を感じ取る働きをしています。
錐体細胞には「赤を感じるもの」「青を感じるもの」「緑を感じるもの」の3種類があり、この組み合わせによって私たちはさまざまな色を識別できるのです。
次に、網膜で受け取った色の情報は、視神経を通じて脳の「視覚野(しかくや)」へ送られます。視覚野は色や形、動きを処理する場所です。
ここで色が認識され、「これは赤だ」「これは青だ」と判断されます。
しかし、色の情報はただ認識されるだけではありません。
その後、「感情」や「行動」をつかさどる脳の別の部分にも影響を与えていきます。
2. 色が感情を引き起こす仕組み
扁桃体(へんとうたい)とは?
扁桃体は、感情をコントロールする脳の部分です。
色の情報が扁桃体に届くと、無意識のうちに「この色は落ち着くな」「この色はちょっと不安だな」と感じるのです。
視床下部(ししょうかぶ)とは?
視床下部は、体の状態を調整する重要な場所です。
自律神経(じりつしんけい)という、心拍や体温、ホルモンの分泌をコントロールする仕組みを動かしています。
色を見るだけで「ドキドキする」「リラックスする」という体の変化が起こるのは、視床下部が影響を受けるからなのです。
3. 色が生理的に与える影響
🔴 赤を見ると心拍数が上がる?
赤はエネルギッシュな色で、興奮や活力を与えます。
科学的な実験でも、赤を見ると心拍数が上がり、血圧が少し高くなることが確認されています。
これは、交感神経(こうかんしんけい)が刺激されるためです。
交感神経が働くと、体は「戦う準備」を整え、エネルギーを生み出しやすくなります。
だからこそ、スポーツチームのユニフォームや、バーゲンセールのポスターには、赤がよく使われるのです。
🔵 青を見るとリラックスする?
青は、逆に「副交感神経(ふくこうかんしんけい)」を優位にする色です。
副交感神経が働くと、心拍数が下がり、呼吸がゆっくりになり、リラックスした状態になります。
そのため、病院の制服や、寝室のインテリアには青がよく使われます。
また、集中力を高める効果もあるので、勉強部屋やオフィスの壁の色としても人気です。
暖色と寒色で違いがあるのはなぜ?
「赤やオレンジ」は 暖色系(だんしょくけい) と呼ばれ、「青や緑」は 寒色系(かんしょくけい) と呼ばれます。
この違いは、色の波長(はちょう) によるものです。光は「波」として伝わっており、その波の長さ(波長)が違うことで、私たちは色を識別しています。
🔴 暖色系(赤・オレンジ・黄色)
- 波長が長い(600~700ナノメートルほど)
- 目に入りやすく、視覚的に強く感じる
- 交感神経を刺激し、興奮しやすくなる
赤やオレンジの光は波長が長いため、目に届きやすく、強く認識されます。
これにより、私たちは本能的に「注意を引かれる」「気分が高まる」などの反応を示します。
ファストフード店の看板に赤が多いのも、視覚的に目立ちやすく、食欲を刺激する効果があるからです。
🔵 寒色系(青・緑・紫)
- 波長が短い(400~500ナノメートルほど)
- 目に入りにくく、落ち着いた印象を与える
- 副交感神経を刺激し、リラックスしやすくなる
青や緑の光は波長が短く、視覚的に刺激が少ないため、自然と落ち着いた気分になります。
海や空の青色が心を落ち着かせるのも、目に優しく、リラックスしやすい波長を持っているからです。
また、緑は目に最も優しい色と言われ、学校の黒板や病院の待合室に使われることが多いのも、このリラックス効果を活かしているためです。

このように、色が「暖色系」か「寒色系」かによって、目に入る強さや脳への影響が異なります。色の波長が生理的な反応に影響を与えているのですね!
4. 文化的要因と個人差
色の意味は国によって違う?
色の感じ方は、文化によって大きく異なります。
例えば、日本では「白」は清潔や純粋の象徴ですが、中国では白は「死」を連想させる色として、お葬式でよく使われます。
また、日本のお葬式では「黒」が一般的ですが、インドではヒンドゥー教の伝統において白が喪服として選ばれることが多いとされています。

ただし、インドは宗教や地域によって文化が異なり、必ずしも「喪服は白」とは言えません。キリスト教徒の多い地域では黒の喪服を着ることもあります。
さらに、日本では「青」は爽やかで落ち着いたイメージがありますが、アメリカでは「ブルー(Blue)」が「憂うつな気分」を表すことがあります。
このように、同じ色でも国や地域によって異なる意味を持つことがあるのです。
人によって好きな色が違うのはなぜ?
色の感じ方には、遺伝や経験も関係します。
例えば、小さいころから特定の色に囲まれて育った人は、その色に親しみを感じやすくなります。
また、過去の経験が色の印象に影響することもあります。
例えば、楽しい思い出のある色は好きになりやすく、嫌な出来事と結びついた色は苦手になることがあります。
これは、脳が色と記憶を関連づけるためです。
さらに、性格によっても色の好みが変わることがあります。
まとめ
- 色は網膜で認識され、脳の視覚野で処理される
- 色の情報は扁桃体や視床下部に伝わり、感情や自律神経に影響を与える
- 赤は交感神経を刺激し、青は副交感神経を優位にする
- 色の波長によって暖色系と寒色系が異なり、心理的な影響も変わる
- 色の感じ方は文化や個人の経験によって違う
私たちが色を見ると、目から入った情報が脳に伝わり、感情や体の働きに影響を与えます。
これは、扁桃体や視床下部といった脳の仕組みによるものです。
例えば、赤を見ると心拍数が上がり、青を見るとリラックスするのも、この科学的な働きによるものなのです。
また、色の感じ方は文化や個人の経験によっても変わります。