昆虫の「完全変態」は、幼虫から成虫へとびっくりするほど姿が変わるすごい仕組みです。
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よく「サナギの中で体がドロドロに溶けて変身する」と言われますが、本当にそうなのでしょうか?
実際にサナギの中で何が起こっているのか、分かりやすく解説していきます!
完全変態とは?
昆虫には、大きく分けて完全変態と不完全変態の2つの成長のしかたがあります。
完全変態をする昆虫は、卵からふ化したあと、幼虫 → サナギ → 成虫という順番で成長します。幼虫と成虫の姿がまったく違うのが特徴で、特にサナギの期間に大きな変化が起こります。
以下は、完全変態をする昆虫です。
- チョウ
- カブトムシ
- ハチ
- ハエ
- アリ
- テントウムシ
など…
それに対して、不完全変態の昆虫は、卵からふ化した後、幼虫(または若虫)→ 成虫という順番で成長します。サナギの期間がなく、幼虫と成虫の姿が似ているのが特徴です。
以下は、不完全変態をする昆虫です。
- バッタ
- カマキリ
- セミ
- ゴキブリ
- トンボ
など
完全変態をする昆虫のサナギの中では、幼虫の体がどのように変わっていくのでしょうか?
サナギの中では何が起こっているのか?
サナギの中では、まず幼虫の体の一部が分解されます。これは、新しい体を作るための材料を確保するためです。
幼虫が持っていた筋肉や消化器官の一部は、消化酵素によって分解され、栄養として再利用されます。
✅ 分解される組織
- 幼虫の時に使っていた筋肉
- 幼虫の食べ物に適した腸などの消化器官
しかし、すべてが溶けるわけではありません。
幼虫の時から体内には「成虫の体を作るもと」が用意されており、それが成虫原基(せいちゅうげんき)と呼ばれる細胞のかたまりです。
サナギの中で成虫原基が成長し、翅(はね)、脚(あし)、触角(しょっかく)などの器官が作られます。
✅ そのまま残る組織
- 成虫原基(せいちゅうげんき)
→ 幼虫の時から体内にあり、成虫の体の一部になる。 - 神経系(しんけいけい)
→ 幼虫の時の記憶が、成虫になっても残ることがある(実験で確認されている)。 - 特定の筋肉
→ 幼虫の時のまま成虫でも使われることがある。
「ドロドロに溶ける」と言われる理由
サナギの中では、一部の組織が分解され、それが栄養となって新しい組織が作られます。
このため、サナギを透視すると、一部の細胞が液体状になっているように見えることがあります。
また、科学者がサナギの内部を分析する際、組織が流動的になっている部分を発見したため、「ドロドロに溶ける」という表現が生まれたのです。
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しかし、サナギの中が完全に液状になっているわけではありません。
分解される部分とそのまま残る部分があるため、単純に「溶ける」と考えるのは誤解を生みやすい表現です。
✅ サナギの中では、一部の組織が分解され、新しい体の材料として使われる。
✅ 幼虫の体が完全に溶けるわけではなく、成虫原基などの組織はそのまま残る。
✅ 「ドロドロに溶ける」という表現は誤解を招きやすいが、内部では計画的な変化が進んでいる。
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サナギの中では単に溶けているのではなく、必要な部分を残しながら、新しい体を作り直しているのです!
「完全変態」は高度な適応戦略!
「なんでこんな大変な変身をする昆虫がいるの?」と思うかもしれません。
その答えは、生存戦略にあります。
✔ 食べるものが違う!
幼虫の時は草や木を食べ、成虫になると花の蜜を吸う、というように食べるものが異なるため、親子で食物を奪い合わなくてすむ。
✔ 生活する場所が違う!
幼虫は地面や葉の裏にいて、成虫は空を飛ぶことで、敵に見つかるリスクが減る。
✔ 環境の変化に強い!
完全変態をする昆虫は、幼虫の間にたくさんの栄養をためておくことができるので、成虫になったあとに食べ物が少なくても生きのびやすくなります。
このような理由から、完全変態をする昆虫は繁栄し、今も多くの種類が地球上に存在しているのです。
完全変態しても幼虫の時の記憶は残っている!?
面白いことに、幼虫の時の記憶が、成虫になっても残る場合があると科学的に証明されています。
つまり、サナギの中では神経系の一部が壊れずに残っていることがわかります。完全にリセットされるわけではないんですね!
まとめ
- 「サナギの中で体がドロドロに溶ける?」→ 正しくは、一部が分解され、新しく組み直される。
- 「全部溶けるわけではない!」→ 成虫原基や神経系の一部はそのまま残る。
- 「完全変態はなぜ必要?」→ 親子で食べ物を奪い合わず、環境に適応しやすくするため。
完全変態は、昆虫が進化の過程で手に入れた驚異的な能力のひとつです。
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次にチョウやハチを見かけたときは、「この子たちはかつて幼虫で、体を作り直したんだな……」と、ちょっと感動してしまうかもしれませんね!