「骨なし魚」はどうやって作る？驚きの技術とメリット・デメリット

「魚は体に良い」と言われて育った私たちですが、近年、魚を食べる人が少なくなっているのをご存知でしょうか？

日本は世界有数の魚消費国として知られていますが、実はその消費量は年々減少しているのです。

特に若い世代にとって、「骨を取るのが面倒くさい」「骨が喉に詰まりそうで怖い」といった理由が、魚離れの大きな要因となっているようです。

魚にはたんぱく質やオメガ3脂肪酸など、健康に欠かせない栄養素が豊富に含まれています。

しかし、骨があることで食べづらく、結果的に魚を避ける人が増えてしまうという現実があります。そこで、滋賀県立大学の杉浦省三教授が開発した「骨なし魚」に注目が集まっています。

魚なのに骨を気にせずに食べられるという、まさに革命的なアイデアです。

魚嫌いの子どもたちや、調理が面倒だと感じている家庭にとって、この新しい技術がどれほど役立つのか、一緒に見ていきましょう。

骨なし魚の仕組み

「骨なし魚」と聞くと、「どうやって魚の骨を完全に取り除くのだろう？」と思うかもしれません。しかし、実際には骨を完全に取り除くわけではありません。

滋賀県立大学の杉浦省三教授が開発したのは、魚の骨を柔らかくする技術です。

骨なし魚の秘密: 骨を柔らかくする技術

骨はコラーゲンとリン酸カルシウムで構成されていますが、このリン酸カルシウムが骨を硬くしています。

滋賀県立大学の杉浦省三教授は、魚が食べる餌の中からリンを減らすことで、骨密度を通常の約70%まで下げ、柔らかくすることに成功しました。

これにより、魚の骨は簡単に噛み砕けるようになり、骨を気にせず丸ごと食べられるのです。

美味しさも向上する意外な効果

研究は、6年以上の長い歳月をかけて行われました。

実験には琵琶湖の水を利用し、ニジマスなど数種類の魚で試行錯誤が重ねられました。

驚くことに、低リンの餌を与えると、脂のノリが良くなり、より美味しい魚に仕上がるという効果も発見されました。

こうして、骨が柔らかくなるだけでなく、旨みが増した魚が誕生したのです。

この技術によって、魚が苦手な子どもたちや忙しい家庭でも、美味しく栄養豊富な魚を手軽に楽しめるようになることが期待されています。

「骨なし魚」開発の苦労と挑戦

「骨なし魚」を開発するまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。

滋賀県立大学の杉浦省三教授の6年以上にわたる研究では、孤独との戦いもありました。

実際、研究期間中、学生の中には「骨なし魚」に興味を持ち、研究を手伝いたいと申し出た人がほとんどいなかったのです。

杉浦教授は「誰も研究に関わりたがらなかったことに驚いた」と話し、研究を続ける中での孤独感を吐露しています。

それでも教授は諦めませんでした。

子どもの健康を願う思いが彼の原動力だったのです。

杉浦教授は、幼少期に厳しい父親から「食べ残しを許さない」というしつけを受け、魚を丸ごと食べることで体が丈夫になった経験を持っていました。

その思い出から、現代の子どもたちにも魚をしっかり食べて丈夫な体を作ってほしいと願い、開発に心血を注いできました。

数えきれない試行錯誤を経て、ようやく「骨なし魚」という大きな成果を手に入れることができたのです。

骨なし魚のメリットと今後の展望

「骨なし魚」がもたらすメリットは多岐にわたります。

まず、魚の骨を取る煩わしさがなくなることで、食事の手間が大幅に軽減され、子どもから大人まで幅広い世代にとって食べやすくなるのが大きな利点です。

これにより、魚離れが進んでいた若い世代や忙しい家庭でも、魚を積極的に食べる機会が増えることが期待されます。

また、骨を柔らかくする技術のおかげで、魚本来の栄養素を丸ごと摂取でき、子どもたちの健康促進にもつながります。

さらに、杉浦教授が発見したように、低リンの餌を与えることで脂のノリが良くなり、より美味しい魚が提供される点も大きなメリットです。

こうした技術は今後、淡水魚だけでなく海水魚にも応用される予定で、より多くの魚種で「骨なし魚」が楽しめるようになるでしょう。

商品化は来年春を目指して進められており、私たちの食卓に革命が起きる日も近いかもしれません。

未来の魚食文化を支えるこの発明が、世界中に広まり、さらに多くの人々の健康に寄与することが期待されます。

骨なし魚のデメリットと考慮点

「骨なし魚」は食べやすさや調理の手軽さから多くのメリットがありますが、デメリットや考慮すべき点も存在します。

1. 食育への影響

骨なし魚に慣れた子どもたちは、骨付きの魚を避ける傾向が強まる可能性があります。

骨を取り除く経験が減ることで、魚の本来の姿や食べ方を学ぶ機会が失われ、食育の観点から課題となることが指摘されています。

2. 魚の価値観の変化

骨なし魚の普及により、魚本来の形状や食べ方に対する価値観が変化し、伝統的な魚食文化が薄れる可能性があります。

魚を丸ごと調理し、骨を取り除きながら食べるという体験が減少することで、魚に対する理解や親しみが薄れる懸念があります。